父の教え 

今日、11月8日は私の父親の命日で、お墓参りに行ってきました。

亡くなったのは、私が11歳のころでしたので、今年でちょうど30年になります。

物心がついたころに亡くなったので、父親の記憶はほとんどありませんが、とにかく優しかったことだけ覚えています。

多感な時期に父親がいなかったせいで、母親にはよくあたりました。

今思えば寂しかったんでしょうね。

当時は片親であることがコンプレックスで、そうなったのは父親のせいだと、父親のことをあまり良く思うことができませんでした。

しかし、大人になるに連れて社会にでるようになると、たくさんの周りの人たちに「あなたの父親には本当に世話になった」とよく頭を下げられました。

私の父親は不動産売買業を営み、銀行の外部理事まで上りつめた人でした。

今ではあまり考えられないですが、事業でお金に困った人に融資の口利きをしてあげたり、事業が上手くいかずに競売にかけられてしまった物件を父親が買い取ってその人に返してあげたり、そのようなことをやっていたそうです。

父親がいないことでいろいろな制限はありましたし、決して裕福ではありませんでしたが、不思議となぜかお金に関しては、それほど困ることはありませんでした。

私が二十歳になったとき、母親から一枚の金貨を渡されました。

父親が亡くなる直前に子供たちのために買った、天皇陛下在位60年記念10万円金貨でした。

「困ったことがあったら、これを売ればいい。でも、これを売るときは本当に最後の手段。だから、これを売るような事態にならないように努力すること。」

そのように母親から伝えられました。

父の教えです。

父親は私たち、残された家族が困らないように不動産と株を残してくれていたのでした。

それら資産を、家族の節目節目に売却し、なんとか生活させてもらっていたのでした。

そして気付くのは遅かったですが、「資産が代わりに恩恵をもたらしてくれる」ということを身をもって教えてくれました。

10万円金貨はその象徴、証です。

父は偉大だったのです。

亡くなっても私たち家族を救ってくれていました。

母親は「亡くなって30年経ったのに有料老人ホームの切符まで買ってくれた」と言って今でも感謝しています。

そして、私のポケットにはその10万円金貨がいつもあります。

その10万円金貨を見つめ、自分の子供が成人になる時に、同じように父の教えを伝えて、譲りたいと思っています。

その時がとても楽しみです。

そして、父は反面教師となってしまいましたが、子供が巣立つまではしっかりとそばにいて、子供に寂しい思いをさせないようにしたいと思っています。

 

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